スキマの時間
北の大空洞。
クラウド、ティファ、シドの三人は先程の戦闘で痛手を負っていた。
「イテテ・・・油断しちまったな」
「今のうちに回復しておくぞ。ティファ、ケアルガ頼めるか?」
「ごめんなさい、わたしも・・・ダメ」
「そうか・・・。シド、エーテルかエクスポーション持ってないか?」
と、その時。
ズシン・・・
三人は顔を見合わせ凍りついた。
地響きするようなこの足音・・・・・・ダークドラゴン。
そこの岩壁のすぐ近くだ。
「・・・まずいな。やり過ごすぞ」
クラウドが声を潜めて指示を出す。
「岩場の隙間に隠れよう。見つかるなよ」
それぞれ身を隠せる場所を探して散った。
ドキン・・・・・・ドキン・・・・・・
ティファは岩場の亀裂に隠れ、早くなる心音を抑えていた。
瀕死とまではいかないが、三人ともひどくダメージを受けている。
今見つかってしまえば、かなりの苦戦を強いられるだろう。
最悪の事態だって想定される。
(お願い、気付かないで)
目を閉じて祈ったそのとき。
「すまない、入れてくれ」
ドキリと目を開けると、クラウドの抑えた低い声と共にその本人がティファのいる狭いスペースに入り込んできた。
とたんに体が圧迫されて、少し息苦しくなる。
「他にいい場所が見つからなかった」
至近距離にあるクラウドの顎と喉元。
ティファは不覚にも、頬が熱を持ち始めるのを感じた。
「・・・・・・ク、クラウド」
「しっ。来るぞ」
・・・ズシン・・・・・・ズシン・・・・・・
地面に沈み込むような足音をさせてドラゴンが近づいてくる。
ティファの心臓はますます早鐘を打ち始めた。
それがドラゴンのせいなのか、クラウドのせいなのか、ティファにはもうわからなかった。
密着した胸から胸へそれが響いてしまいそうで、ティファは居心地悪そうに身じろぎした。
「・・・動くなティファ。気付かれるぞ」
耳元で囁くような声。
ティファは目を瞑って俯いた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
突然、くぐもったドラゴンの鼻息が聞こえた。
近い。
すぐそこだ。
匂いを嗅ぎ、探しているような息遣い。
(見つかる・・・)
ティファはクラウドを見上げた。
クラウドは瞳だけ外に向け、息を殺し気配を伺う。
しばらく辺りを嗅ぎ回っていたドラゴンだったが、幸いなことに三人に気付くことなく去っていった。
「ふぅ・・・」
安堵のため息を小さくつくと、クラウドは瞳をティファに向けた。
「狭かったよな。ごめん」
「う、ううん。よかったね、気付かれなくて・・・」
「ああ」
あまりに顔が近いため、目を合わせられず俯いたままのティファ。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
なかなか出ていこうとしないクラウド。
少し遠いところから、シドの「うい~~・・・」と腰を伸ばすような声が聞こえた。
(早く出ないと・・・また何言われちゃうか)
焦ったティファがクラウドと岩壁の間から這い出ようと身を捩ったとき、クラウドが腕を伸ばしそれを制した。
「ティファ」
小さく呼ぶ声に恐る恐る顔を上げると、真剣に見つめる甘やかな瞳。
ドキン・・・
さっきよりも大きく跳ねる心音。
(これって・・・)
思った通り、少し遠慮がちに唇と唇が重ねられた。
「ーー・・・」
少し長く合わさったそれが離れると、クラウドは照れた笑みを浮かべた。
「・・・最後かもしれないと思ってたけど、思いがけず・・・できたな」
そう言うと、クラウドはスルリと隙間から抜け出して行ってしまった。
「おぅ、無事か。危なかったな~!ティファはどこだ?」
「そこにいる。腰が抜けて動けないから、しばらくそっとしておいてやってくれ」
「そんなに怖かったのかぁ?ティファが?ほんとかぁ~?」
「ああ」
明らかに不審がるシドの声を聞きながらティファは真っ赤な頬を両手で包んでいた。
(確かにこんな顔で出ていけないけど・・・もう!)
なかなか引かない火照りに、ティファは岩場の隙間にしばらくしゃがみ込むしかなかった。
FIN
決戦前夜後にこんなチャンスがあったらいいね。
痛手を負っていたわりにみんな結構元気そうなのが気になるけど(笑)
以前更新が難しいときにBBSの方で短いお話を数話書いたんですが、せっかくなのでこちらに持ってきました。
あと二話ほどあるのでそちらも近々アップしまーす♪
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