カタチを変えて

重苦しい、不安な気持ちで目が覚めた。
孤独と喪失感に胸を締めつけられる思いで、薄暗い部屋の中ぼんやりと天井をみつめた。

(・・・・・・夢・・・か)

徐々に夢と現実とがはっきり分かれていく。
すでにもう断片的にしか思い出せないが、嫌な夢を見ていた。

無意識のうちに祈るような思いで傍らに目をやると、そこには寄り添うようにして眠るティファがいた。
ティファの寝顔を目にしたとたん、夢の続きで胸に残っていた黒い塊が急速に溶けていった。
ティファの方へ体ごと向け、ただただ、ティファを見つめる。
クラウドは考えた。

(ティファがいなかったら今の俺はどんなに孤独だろう)

どこでどんな生活をし、誰と一緒にいるのか。
今となっては何もわからないが、皮肉なことに誰ともいないであろうことだけは、安易に想像できた。

ティファの小さな寝息に、愛しさが込み上がる。
シーツに流れた、ティファのすべすべした髪にそっと指を絡めた。

(愛してる・・・ティファ)

心の中で、素直な気持ちで呟く。
人をこんなに愛せるものなのだと、驚きを含んだ感情で自分の想いをみつめた。
そこにカタチがあるように、暖かな存在を胸に感じる。
幼い頃とはまた違う、ティファへの想い。
あの頃はただただ憧れて、遠くから眺めるだけで何かのチャンスが訪れるのを漠然と待っているだけだった。
ガキだったな、と今となっては思う。しかし、あの頃はあの頃で必死だったのだ。
今は、あの頃とは色も形も変えて、何ものにも代えがたいものとして胸の中に沁みこんでいる。

(愛って、こういうものなんだな)

決して口に出して言えないセリフだが、心が確かに感じる。

(ティファ)

彼女の名前を心の中で呼ぶだけで、暖かいものが胸を満たす。
こうやって素直に愛し合えるまで時間がかかったけれど、だからこそもう離れることはないのだと感じる。

愛しさに胸を痛くしてティファをみつめていると、クラウドが起きている気配を感じたのかティファが瞳を開いた。
視点の定まらない瞳を瞬くと、クラウドの視線に気づき、寝惚け眼のままティファが見つめ返す。

「ん・・・クラウド・・・」
「おはよう、ティファ」

たまらずにティファを抱きしめる。

「うん、おはよう・・・どうしたの?」

抱きしめられたまま、ティファがくすりと笑った。

「・・・・・・・・・なんでもない」

ティファの首元に顔を埋め、彼女の香りを胸いっぱいに吸い込んだ。
愛しくて、想いを抑えられない。
クラウドはティファの唇を愛しそうにむさぼった。
ティファが大切過ぎて、恐い。
唇を離すと、ティファが少し驚いて、それでも嬉しそうに微笑んで言った。

「・・・なんでもないことないでしょ」

クラウドは少年のようにコクリと頷いた。

「どうしたの?」
「好きだ、ティファ」

再びティファを強く抱きしめ、唇を重ねた。

温かいベッドの中、押し寄せる愛情に身を任せて。

 

 

 

 

 

FIN

 

 

 

クラウドはこうやってうなされて起きることがしばらくあると思う。
その度に隣で眠るティファを見て、ありがたさを身にしみて感じてるといい。
愛を知ってる人は恋との違い、一目瞭然で感じ取れるもの。
「愛してる」はなかなか言えないだろうけど
クラウドがはっきり愛を感じとる瞬間、きっとこれからたくさんあるよね。

 

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